これまでのデータによると、25~30歳の若い女性がダウン症儒の子を産む率は、1000回の出産につき1回だが、35歳~40歳の女性では30回につき1回、40歳以上となると100回につき1回という高率になる。 このことから35歳以上の妊婦では、「医師のほうから高齢出産を理由に検査を示唆するケースが多く、結果的に妊婦のほうから検査を申し出る」のが産婦人科での現実となっている。
もう1つの主な対象は、両親の家系などから見て、重い遺伝病をもっている可能性がある胎児だ。 日本産科婦人科学会は87年に作成したガイドラインのなかで、胎児診断を行ってよい対象として高齢妊娠の他に「重篤でDNA診断が可能な遺伝性疾患の保因者」「その他重篤な胎児異常の恐れがある場合」などをあげている。
しかし具体的な病名は示されていないうえ、「重篤な」とはどの程度の症状なのかといった判断も、個々の医師にまかせている。 そのため、少子時代ということもあり、胎児診断を受ける率は高まる一方、というのが現場の医師に共通する認識となっている。
羊水検査は妊娠14週目以後にならないと技術的に難しいが、繊毛検査はより早い時期である9週目には可能になるメリットがある。 ひとくちにいえば、母親と胎児を結ぶ初期の組織が繊毛で、しだいに成熟した胎盤へと成長していく。
受精卵から分裂して分かれたものだけに、胎児の細胞と同じ遺伝情報をもっているのを利用して、目的とする染色体や遺伝子DNAの状態を調べるのである。 前述したPCR法によって細胞中のDNAを簡単に増やせることもあって、理論上は200種類以上もの遺伝的な病気が、このような胎児診断によってわかるといわれる。
「遺伝性の疾患が早めにわかれば、患者である胎児への対応も早めに準備できる」のが、早期に胎児診断を行ったときの最大のメリットだとされている。 事実、胎児の段階で骨髄移植をするなどの治療技術も発達してきて、早めの診断や出産直後からの処置が効果をもつ場合も増えてきている。
しかし現実は、そう簡単な話ではすまない。 致死性の病気や重い病気が予想される場合はもちろん、もっと軽症の疾患が考えられるケースでも出産を嫌う親がいて、どうしても妊娠中絶の方向に進みがちになる。
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